庇(ひさし)の長さを計算して冬暖かく夏涼しく過ごす

太陽光を庇でコントロールすれば冬暖かく、夏涼しい。

寒い冬。酷暑の夏。室内温度が不快気温になれば活用するのがエアコン。最近のエアコンは技術開発が進み、どんどんエコになり電気代がかからないようになっていますよね。しかしそうは言っても、「エアコンをつけたら電気代が1万円越え……」なんてことはよくある話ではないでしょうか。電気代は節約したい。けれど快適に過ごしてたい。その両方の願いを叶えてくれるキーワードがパッシブ設計です。冬はできるだけ太陽光を室内に取り入れ、夏は直射日光を遮り室内に取り入れない。そうすることにより、室内気温が上がりすぎたり下がり過ぎたりする日数を極力減らすための設計がパッシブ設計なのです。パッシブ設計の中で今回は庇の長さを検討することにより、冬暖かく夏涼しい家に近づけるための考え方を紹介します。

太陽光をコントロールする方法

夏の太陽光を遮るために有効な方法は色々あります。ブラインドやカーテンなどがありますが、夏の太陽光による室内の温度上昇を防ぐためには、太陽光は屋外で遮るのが最も効果的です。遮光カーテンなどで室内で遮光しても効果はありますが、屋外で遮る方がより温度上昇を防ぐことができます。その方法として昔から活用されているのが簾(すだれ)です。かなり効果は高いですが、風で飛んでしまったり、取り外しが必要です。また家の外観とは合わないこともよくあります。今回は庇により太陽光をコントロールする方法を提案します。

庇の設置場所は南面

方角により日射の遮り方は異なります。まず西面と東面ですが、この2方向は太陽高度が時間帯により大きく違うので、庇での日射遮蔽は困難です。日射を遮りたい暑くなる時期はすだれやグリーンカーテンを設置するなどしましょう。また、ガラス色を日射遮蔽率の高いグリーンタイプやブロンズタイプを選択する方法もあります。可能であれば窓を極力小さくしたり一切無くしてしまうという方法もあります。しかし部屋が暗くなってしまわないように南面で採光可能なことが条件になります。庇で日射をコントロールすることができるのは太陽高度が安定している南面窓となります。

庇の出幅を検討する

続いては庇の出幅を検討します。庇の出幅を考えるためには、窓の高さとその地域での南中高度を調べる必要があります。

keisan(南中高度計算サイト)

上のようなサイトを使えば、南中高度を調べることができます。大阪の気候では、大体9月の中頃までは酷暑が続きます。太陽が昇り11時を過ぎるくらいには暑さが厳しくなるイメージがあるので、9月中頃の11時の太陽高度を調べます。上記のサイトで必要事項を入力すると、56.7°となりました。この高度より高い太陽を遮る庇の出幅はどれくらい必要かを計算していきます。

庇長さ計算(excelファイル)

窓の高さや太陽高度を入力するだけで必要な庇出幅を計算するExcelシートを作成しました。高校数学で学習する三角関数のタンジェントを利用したものです。試しに窓の高さ幅を500mm、窓から庇の幅を50mm、太陽高度を56.7°と入力してみると、必要な庇出幅はは361mmとなります。

以上の結果から私の建てた新築住宅では500mmの高さ幅の窓にはYKKのひさし5PRの350mm出幅を採用しています。

これ以上出幅の大きな庇を採用しても夏の日射を遮ることはできますが、今度は冬の日射をも遮る結果となり、冬の室内温度を太陽光により上昇させることが難しくなります。日射取得のための窓(南面の掃き出し窓等)では庇の出幅を夏の夏の日射を遮り、冬の日射を取得できるちょうど良い出幅の庇の長さを検討する必要があります。

以上のように必要な庇の出幅を計算することができますが、窓の高さ幅×0.3おおよその目安とされています。

結論

夏涼しく、冬暖かい家を建てる必要なことは沢山あります。断熱材にこだわったり窓の性能を向上させたりすることも必要ですが、最も大切なのは室内に入射する太陽光をコントロールできるかが大きな要素となっています。その方法として、すだれや外付けブラインドなどの方法もありますが、窓をつける場所と方角、大きさをしっかり検討する必要があります。例えばいくら断熱性能にこだわっても、西面に大きな窓が設置されていては室内温度はどんどん上昇してしまいます。南面に関しては庇などの出幅を調節すれば、夏は日射を遮り、冬は日射取得してエアコン光熱費を軽減しながら快適な室内温度に近づけることが可能です。

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